全脳科学帳

これを好む者はこれを楽しむ者に如かず

Genographic Projectの分析結果

私のDNAの分析結果が出た。「Genographic Projectに参加」で書いたように、家族からの誕生日プレゼントとしてGenographic Projectに参加し、私の細胞のサンプル(頬の内側から採取)を送って分析してもらっていたのだが、Webで自分のIDを入力すると結果が見られるようになった。サンプルを発送してから49日。ちょうど7週間かかっている。

それによると私のY染色体は、M175と呼ばれる遺伝子マーカーによって定義されるHaplogroup O(オー)に属するらしい。haplogroupというのは、染色体中の遺伝子の組み合わせ(haplotype)によって特徴づけられる血統のグループといったところ。

このHaplogroup Oは東アジア(日本、南北朝鮮、中国など)に特徴的な血統で、東アジア人の80〜90%はこの血統に属する。そして西アジアにはほとんど存在せず、ヨーロッパには1人もいない血統である。

人類発祥の地であるアフリカ東部からM175(Haplogroup O)に至るまでの移住経路は図の通り(遺伝子マーカーの名前は私が挿入した)。以下のような順序で派生していったらしい。

  1. M168: 約60000年前にアフリカ大陸から移住し始めた人たちの血統。アフリカ以外で現存する血統は全てこのM168血統の子孫。「ユーラシアン・アダム」と呼ばれる1人のアフリカ人男性にさかのぼる
  2. M89: 約45000年前に北アフリカか中東でM168から発生。非アフリカ人の90〜95%はこの血統の子孫
  3. M9: 約40000年前にイランか中央アジア南部でM89から発生。北半球のほとんどの人はこのマーカーを持つ
  4. M175: 初期のM9血統のシベリア人から発生。約35000年前にシベリア南部を横断して東アジアに到達したあと氷河時代がピークに達して孤立したため、東アジアに特徴的な血統となっている

これはY染色体だけの分析結果だが、少なくとも私の父親父親父親の... をたどるとこういう移住経路になると思われるということである。

別の文献によると、日本人の中のHaplogroup Oの割合は約50%である。東南アジアから北上して日本に渡ってきたHaplogroup C(M130), D(M174)の人たちがかなり存在するため、日本では他の東アジアの国よりHaplogroup Oの割合が小さくなるようである。

今回注目していたことの1つとして、私が酒を飲めないこととの関係が何かわかるかどうかというのがあった。以前「下戸の系譜(1), (2)」でも書いたが、下戸の遺伝子は北部シベリアで発生した新モンゴロイドと呼ばれる人たちが持っていたと言われている。彼らは朝鮮半島を通って日本に渡来した、いわゆる弥生人である。M175もシベリアで発生したとのことであり、どうやらこれが新モンゴロイドの血統らしい。対してHaplogroup C, Dが古モンゴロイド(縄文人)に対応するのだと思う。私は新モンゴロイドの血統に属し、祖先の中に酒に弱い遺伝子を持った人がいたということだろう。

このプロジェクトの存在を知ったLife is beautifulのエントリを見ると、ブログ主の中島さんは遺伝子マーカーM122で特徴づけられるHaplogroup O3(Oの派生)に属するらしい。私の方はその前のM175で止まっていて、M122には派生していない。M122は稲作技術を発明した人たちの血統で、これは新モンゴロイドが稲作技術を日本に伝えたと言われていることとも一致する。それにしても、米を栽培して食べ始めた人たちの遺伝子マーカーが見つからずにその前で止まっているなんて、rice-addictの名がすたるではないか。なんかくやしい。