全脳科学帳

これを好む者はこれを楽しむ者に如かず

運転中の携帯電話

以前自転車通勤していたころ、横断歩道を青信号で渡る時に横から曲がってくる車が突っ込んできてドキッとすることが時々あった。その時に運転手を見ると、かなりの確率で携帯電話で通話していた。

運転中の携帯電話の使用は2004年11月1日から法律で禁止されている。私も運転しながら通話したことが何度かあったが、注意力が散漫になってかなり危ない。なんというか、意識が回線の向こうの通話相手の方に飛んでしまうのである。

同乗者と話をするのに比べて運転中に携帯電話で通話するとなぜ危険なのかについて、大脳生理学的・人間工学的に明確な結論が出ているのだろうと思っていたが、検索してみるときちんと書いているサイトが見当たらなかった。以下のようなページは見つけたが。

われわれは、当実験結果から次のような推論をしている。まず自動車内では携帯電話の音声がひんぱんに途切れる(未発表データ)。音声が途切れると右頭頂葉が過渡的に活動する。それで聴覚的注意の資源が浪費される。自動車運転には視覚を主に用いるが、聴覚的注意も必要である。したがって音声の途切れが自動車運転を危なくさせる多くの原因のうちの1つになるであろう。

音声の途切れがひきおこす脳活動

「原因のうちの1つ」と書いているからそれだけではないとは言っているのだろうが、なんか違うと思うなあ。音声の途切れなんてそんなに感じないし、途切れなくても「意識が向こうに飛ぶ」ことによって危険な状態になっていると思うのである。そこを解明してほしいのだが。
そして、こんなことを主張しているページもあった。

そこで登場する優れものが「ハンズフリー装置」です。
実はこの法律には盲点というかポイントがあって「携帯を手でもって」というのが基本条件となっているのです。言い換えれば「携帯を手に持たない通話はOK」ということになります。
実際、警察庁のウェブサイト上でも「ハンズフリー装置を併用している携帯電話については…中略…規制の対象とはならない」との見解が掲載されています。

合法的に運転中でも携帯電話を使う方法が存在した!◆運転中の携帯利用で罰金は払うな(2/2)

道路交通法で禁止されているのは「運転中に携帯電話等を手でもって、通話のために使用したり、画像を注視する行為」であり、携帯電話を手で持たないハンズフリー装置を使えば違法にならないからハンズフリーで使いましょうという主旨だが、賛成できない。ハンズフリーでも携帯電話を耳に当てている場合に近いぐらい「意識が飛ぶ」ので危ないと思うのである。そこのところをきちんと検証せず、危険なことをさも解決策であるかのように書いてほしくない。同じ記事で

今回の法改正による罰則強化は、あくまで運転中の事故を防止するものです。運転中にハンズフリー装置を装着していて事故ったり…などというのでは本末転倒です。運転中に携帯電話を使うのであれば、罰金を払わない(捕まらないようにする)のはもちろんのこと、どうしたら安全に通話ができるかを考えて、時には車を止めて通話するなどしてケータイを便利に利用してください。

同上

とフォローしているが、「もちろんのこと」なのは「罰金を払わない」ことではなくて安全運転の方じゃないのか。

こんな記事もある。

IIHSの副会長でこの論文の執筆者の1人でもあるアン・マッカート氏は次のように話した。「ハンズフリーならそれほど気をとられないので、携帯電話を手に持って話すほど危険ではないと思われている。ところがわれわれの調査から、どちらの形でも危険であることがわかった」

運転中の携帯電話、ハンズフリーでも危険大

ほらほら、やっぱりハンズフリーでも危険ではないか。

携帯電話で話しながら運転すると危ないのは、我々の脳が通話先の相手を自分のまわりの環境の一部だと見なせないからだと思う。つまり、同乗者であれば自分が運転している車や道路と同じ環境の中にいると見なせるから、そこからの話し声を聞いて応対することと道路の状況に応じて車を操作することとを同時に処理することができる。しかし電話の向こうの声は自分のいる環境とは違うところから来ていると見なしてしまうので同時にきちんと処理することができなくなるのではないか。これが正しければ、ハンズフリーで通話していても電話である限り相手は別の環境にいると見なされるであろうから、やはり危険だということになりそうな気がする。このあたりを誰か大脳生理学的に解明していないものか。