全脳科学帳

これを好む者はこれを楽しむ者に如かず

色覚異常(3) 発覚

私が子供のころは、小学1年の健康診断で色覚検査があった。色覚異常(1)でも書いた、石原式色覚検査表というやつ。小さな円が集まった模様の中の数字を読ませる検査である(サンプル ※2010.7.28 リンク先変更)。

この検査表、1つ目はいつも非常に見分けやすい模様で、たいてい"12"と書いてある(サンプル)。そして2つ目に早くも「ひっかけ問題」がある。普通の人には"8"に見えるが色覚異常者には"5"に見えるのだったかその逆だったか、とにかく見えたと思って答えると不正解という意地の悪い模様である。私はこの2つ目で間違え、3つ目以降は全く読めなかった。

ここで担任の先生と保健の先生が険しい顔になり、何か相談を始めた。そしてクラス全員の検査が終わるまで横で待つように言われた。私は自分の色覚異常について全く知らなかったから、何が起こったのかわからない。クラスメートが検査を受けているのを横で見ていると、ランダムにしか見えない模様を見てなぜかみんな数字を答えている。きつねにつままれたような気分だった。「自分だけ何かおかしいのか?」という疑念が頭をもたげる。

それでも私は狡猾にも、みんなが答えている数字を全て覚えることに成功し、二度目の検査ではそれらを答えて、保健の先生に「色は見えてるよね」と確認されたあと一応釈放となった。

しかし学校から両親に連絡が行ったらしく、後日母に連れられて眼科を受診した。当然色覚異常という診断だった。つい最近になって知ったのだが、両親は遺伝の関係で私に色覚異常の可能性があることを知っていたので、「心配していたことが現実になった」という状況だったらしい。

軽度の色覚異常の場合、それが判明するのはたいてい最初の検査の時であり、その場でまわりの人(この場合は小学校の先生)がどういう対応をとるかというのは結構重要である。石原式検査表の読めない児童がいたときにクラス全員が終わるまで横で待たせるというのは、おせじにもよい対応とは言えない。色覚異常であることが確認されたのだからそれを記録した上で、本人にきちんと話をしてくれるか、サラッと流して両親に連絡してくれたらよかったのだが。当時は色覚異常の認知度が今より低かったとはいえ、男なら20人に1人ぐらいの割合なのだから、平均してクラスに1人ぐらいはいたはず。少しでも慣れた対応をとってくれなかったのは不思議である。

現在では小学校の健康診断から色覚検査が廃止されている。しかしこれはこれでよいこととは思えないのである。

(つづく)