全脳科学帳

これを好む者はこれを楽しむ者に如かず

引き算の減加法と減減法

id:Yama-Mikasaさんのブログ「読書生活」にこんなエントリがあった。 www.yama-mikasa.com 12 - 5のような繰り下がりのある計算を頭の中でどのように計算しているか? という問題。これくらいなら誰でも答を覚えていると思うが、覚えていないとしたらどう計算…

ABC予想の同値な表現

先月のことになるが、ABC予想が解決されたらしい、ということが報じられた。 www.asahi.com 大ニュース。どうやらこれはもう、証明されたと思ってよさそうである。 ところで、ABC予想が主張している内容にはいくつかの表現方法がある。 まず共通の事柄として…

連続性と微分可能性 (1)

実関数 が で連続であるとは、極限 が存在して に等しくなることをいう。もっとちゃんと言うと、任意の に対して が存在して、 ならば となることである。 関数 が で微分可能であるとは、微分係数 が(有限の値として)存在することをいう。 で微分可能である…

負の数と負の数を掛けるとなぜ正の数になるのか

あるセミナー(数学とは関係ない)で講師の人が何かの例を説明する時に「マイナスとマイナスを掛けるとプラスになりますからね」と言ったら、参加者の一人から「なつかしい!」という声が上がったことがあった。「そうか、なつかしいのか…」と妙に感心してしま…

eが超越数であることの証明

(ネイピア数、自然対数の底)が超越数であることは、1873年にシャルル・エルミートによって証明された。つまり は有理数係数(整数係数としても同じ)の代数方程式の解とならない数である。その証明は相当ややこしい。 私はこの動画を観て自分のノートにまとめ…

フィボナッチ数列の一般項を求める

フィボナッチ数列は、 という漸化式で与えられる数列。具体的な値は、 である。この数列の一般項を知った時は驚いた。 「数学ガール」(シリーズ第1作)では母関数を用いて一般項を導出していたが、等比数列に帰着する方法でガリガリと求めることもできる。 が…

素数の逆数和 その2

素数の逆数和が発散することをレオンハルト・オイラーが最初に示した時の証明を調べてみた。エルデシュの証明と同じく、これで素数が無限に存在することも言える。「素数が無限に存在することの証明(4)」で書いたオイラーの証明と同じアプローチを使っている…

素数が無限に存在することの証明 (6) 〜 素数の逆数和 その1 〜

6つ目の証明は、ポール・エルデシュによるもの。生涯に約1500本もの論文を発表したことや、それらの多くが共著だったことで知られる人。この証明では、素数の逆数の和が無限大に発散することを示す。素数が有限個しか存在しないなら逆数の和は有限の値になる…

素数が無限に存在することの証明 (5)

5つ目の証明はゴールドバッハによるもの。フェルマー数を使う。フェルマー数とは で表される数のことで、 に対して である。 証明 まず、以下の補題を証明する。 補題 任意の に対して である。 補題の証明 数学的帰納法で証明する。まず のとき、 、 である…

素数が無限に存在することの証明 (4)

次に紹介するのは、かのレオンハルト・オイラーによる証明。 これはかなり毛色が異なる。 証明 素数が有限の 個しか存在しないと仮定し、それらを とする。 各素数 に対し、等比数列の和の公式より である。右辺を のすべてについて掛け合わせた値 を考える…

素数が無限に存在することの証明 (3)

3つ目の証明として、スティルチェスによるものを。 スティルチェスは19世紀のオランダの数学者で、解析学で業績を残した人。 この動画で3つ目の証明として紹介されている。 素数が無限個あることの意外に知られていない3つの証明 証明は短い。背理法を使う(※…

素数が無限に存在することの証明 (2)

2つ目に紹介する証明は、2006年にフィリップ・サイダックが発表したもの。とても簡潔で、私はこの証明が最も好きである。 証明 を1より大きい整数とする。 と は互いに素なので、 は少なくとも2つの異なる素因数を持つ。同様に、 と は互いに素なので、 は少…

素数が無限に存在することの証明 (1)

素数とは、1より大きい自然数で、1と自分自身以外に約数を持たないもののこと。具体的には、2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, が素数である。 素数が無限に多く存在することはよく知られていて、たくさんの証明がなされている。それらのいくつかについて書い…

πが無理数であることの証明

ネイピア数(自然対数の底) に続いて、今度は円周率 が無理数であることの証明。Wikipediaによると、初めて厳密に証明したのはルジャンドルで、1794年のことだった。初等的な微分積分のみを用いた証明はイヴァン・ニーベンが1947年に与えている。 よりずっと…

東野圭吾「天空の蜂」のメッセージ

東野圭吾の小説の大ファンである。倫理観をゆさぶられるようなテーマ、予想もつかない展開、クリアな文体。数え間違っていなければ、本として出ている東野作品は今日現在で長編・短編集・エッセイ集・絵本を合わせて85作あるのだが、あと10数作で全部読了と…

特殊相対性理論(2) 光の伝わり方

アポロ11号の月面着陸(1969年)は、子供のころに大きなインパクトを受けたできごとの1つだった。 その時に知ったことの1つが、宇宙空間では音が聞こえないということ。真空では空気や水のような音を伝える媒質がないから聞こえない。宇宙戦艦ヤマトなどのアニ…

eとその有理数乗(0乗を除く)が無理数であることの証明

ネイピア数(自然対数の底) と円周率 はともに、無理数でありさらに超越数であることが知られている。 無理数: 有理数(分母・分子がともに整数である分数で表せる数)でない実数 超越数: 有理数係数の代数方程式 の解とならない複素数(「有理数係数」は「整数…

それは何の役に立つの? (1)

科学の話、たとえば宇宙のなりたちとか、物質の構成とか、エネルギーとかエントロピーとか、量子力学とか、相対性理論とか、数学の定理とか、そういう話を、普段そういうことになじんでいないと思われる人にすると、決まってされる質問がある。 「それは何の…

特殊相対性理論(1) ことはじめ

子供の頃から科学が好きで、科学に関する本をよく読み、科学者に憧れていた。 好きな科学者、興味を引かれた話を挙げていけばきりがないが、その中でも特に衝撃だったものの1つは、小学生の時に何かの読み物で読んだ「高速で動く物体では時間の進み方が遅く…

色覚異常(5) 検査

だいぶ前のことになってしまったが、3月に色覚の詳細な検査を受けてきた。 私の色覚異常がわかったのは小学1年の健康診断の時だった(→ 色覚異常(3) 発覚)のだが、それ以来石原式検査表以外での詳しい検査を受けたことがなかった。特に必要に迫られているわけ…

廊下を曲がれる棒の長さに関する問題

高校の時に目にした数学の問題で、ずっと印象に残っているものがあった。多分「大学への数学」かその別冊に載っていたのだと思う。自分で解いたことはなかったし、答も全く覚えていなかったのだが、最近ふと思い立って、ちょっとカンニングしながらも解を導…

色覚異常(4) カラーユニバーサルデザイン

はてなで、カラーユニバーサルデザイン対応PCモニターのプレゼントキャンペーンが開催されている。自分のはてなダイアリーで「ナナオのカラーユニバーサルデザイン対応ワイドモニターが欲しい!」と書くと応募したことになる(これで応募完了)。 このモニター…

色覚異常(3) 発覚

私が子供のころは、小学1年の健康診断で色覚検査があった。色覚異常(1)でも書いた、石原式色覚検査表というやつ。小さな円が集まった模様の中の数字を読ませる検査である(サンプル ※2010.7.28 リンク先変更)。 この検査表、1つ目はいつも非常に見分けやすい…

色覚異常(2) 伴性遺伝

いろいろなところに書かれていることであるが、まずは色覚の遺伝について。色覚は伴性遺伝と呼ばれる遺伝のしかたをする。 人間の遺伝情報は23対の染色体ペア(各ペアの片方を父親、片方を母親からもらう)の上に乗っており、そのうちの1対の性染色体がXYなら…

色覚異常(1) カーナビ

昨年、家族で北海道に旅行に行った。札幌→洞爺湖→函館と移動し、函館では市内をレンタカーでまわった。妻はペーパードライバーなので、今のところ運転はもっぱら私の役目である。 最近のレンタカーには無料でカーナビがついていることが多い。方向音痴の私に…

渡り廊下問題(2) 極限値

同じ階数の2つのビルの間を行き来する手段として、1階に加えて渡り廊下を1つ設ける場合にどの階が最も効率がよいかという問題の続き。ビルの階数に対する渡り廊下の最適位置の割合の極限値が気になるので、前回Perlスクリプトに計算させた「全ての移動の組み…

渡り廊下問題(1) 最適位置

私がよく出張で行くところには7階建てのビルが2つあり、それらの間で行き来が多く発生する。そのため渡り廊下が1つ、5階に設けられている。 その渡り廊下を渡りながら、ふと「これが5階にあるのは最適なのか?」という疑問が頭をもたげた。 渡り廊下を設ける…

運転中の携帯電話

以前自転車通勤していたころ、横断歩道を青信号で渡る時に横から曲がってくる車が突っ込んできてドキッとすることが時々あった。その時に運転手を見ると、かなりの確率で携帯電話で通話していた。運転中の携帯電話の使用は2004年11月1日から法律で禁止されて…

Genographic Projectの分析結果

私のDNAの分析結果が出た。「Genographic Projectに参加」で書いたように、家族からの誕生日プレゼントとしてGenographic Projectに参加し、私の細胞のサンプル(頬の内側から採取)を送って分析してもらっていたのだが、Webで自分のIDを入力すると結果が見ら…

Genographic Projectに参加

今日は誕生日。ほしいものがないという話をメモブログに以前書いたが、やっとほしいものが見つかったので、家族からの誕生日プレゼントはそれにしてもらうことにした。といっても、ほしいものは正確には「物」ではない。 Life is beautifulの「DNA マーカー…